木の不思議再発見

現在地球上の生物で最も大きく長寿の生物は?

それは樹木です。

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世界最大の樹木
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カリフォルニア州レッドウッド国立公園のセコイア

アメリカ・フンボルト・レッド・ウッド州立公園のセコイアといわれ、その高さは124mに達しております。

※「レッドウッド保護連盟(Save-the-Redwood League)」HP: http://www.savetheredwoods.org/
寿命の長いもの
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縄文スギ

カルホルニァ州にあるブルスルコーンパイン(マツ)で5,000年を超え、世界遺産条約に登録された日本のヤクスギは2,000~3,000年の樹齢のものが多く、なかには7,000年ともいわれる縄文スギもあります。
長寿といわる人の寿命が120年才前後ですから樹木の寿命はまさに驚くほどです。

樹木はなぜ巨体を保持し長寿を保てる?

それはリグニンという物質のおかげです。

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この聞きなれない物質は元来、植物にとって有害な排出物でしたが植物の進化の過程で水中生活から陸上生活に変わると、そのとき水中に排出していたものを体内に取り込み無害化するという絶妙な処理をやってのけたのです。

この体内に取り込まれたリグニンが木材繊維を構成する細胞壁にセメントを塗り固めたようにビッシリと貼り付いて接着剤の役目を果たし、これが樹木全体を極めて強固な、そして長生きする性質を持つことにしたものです。

リグニンとは?:「独立行政法人森林総合研究所」HP: https://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/kouho/mori/mori120/mori-120.html

フィトンチッドとは?

木が優れた素材であることを示すものとして殺菌作用があります。

樹木が放出するにおいの中に周囲の細菌やカビ、害虫などを寄せ付けない作用が含まれています。

フィトンとは「植物」、チッドとは「殺す能力」であり、植物が出している忌避物質の殺菌作用を意味しています。

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私たちが森の中に入ると一種独特のすがすがしさを覚えるのは、このフィトンチッドによるものです。フィトンチッドは森林の空気をすがすがしいものにすると同時に人間の健康にプラスの作用をします。

共立女子大学の神山謙三教授は「木が放出する特殊の成分が、それを吸い込む人たちの心を和ます鎮静作用がある」と述べておりますが、これが最近注目されております「森林浴」の効果のもとです。

木は生きもの

日本の文化は木の文化

ヨーロッパの文化は「石の文化」といわれるのに対し、日本の文化は「木の文化」といわれております。

世界遺産条約に登録された世界最古の木造建築物である「法隆寺」は柱、梁などの主要構造材には1,000年以上を経たヒノキが使用されております。

法隆寺

法隆寺

ヒノキは、千葉工大小原二郎教授の研究によると曲げ強度や圧縮強度は200年ぐらいまでは少しづつ増大しその後は漸減し1,000年経った今日、創建当時とほぼ同じ程度の強度を保っているとされております。

法隆寺は現在、1,300年余を経ていますが、さらに1,000年以上は今日の姿を持ちつづけるであろうといわれています。鉄筋コンクリート造りの建築物が100年程度の寿命といわれる中にあって、その息の長さは驚くほどです。

法隆寺のほか17世紀から18世紀にかけて建造された木造建築物が全国各地に数多くありますが、木材以外の建材では果たしてこのような昔の姿をとどめることが出来たでしょうか。

木は伐られて建築物に使われてからもなお生き続け、その美しい姿を保っているのです。

木目をみて人はなぜ故快適さを覚えるか?

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私たちは、年輪や木目を見たり、「白木の肌」と言う言葉を聞くと、何かしら心がなごむのを覚えます。

これは日本人の美意識や自然観に根ざしたものといえますが、なぜ木造住宅に快適さを覚えるのでしょうか?。

東京工業大学の武者利光教授のグループは、電気通信の際に生ずる電波の揺れ(通信雑音)の一つである「f分の1の揺れ」が快適さと関係があると述べております。これを身近なものにあてはめると、物の手ざわり、模様、美術、音楽にいたるまで「f分の1の揺らぎ」をもつものがあることがわかりました。例えば木の柾目模様、イグサを1本1本編んだ畳、太さのマチマチな手打ちうどん等です。
プラスチックや金属に木目模様を印刷したり、木目が印刷された紙やフイルムを貼りつけたものをよくみかけますが、これは木目の模様がやすらぎを覚えるために取られた一例です。

このように木目や新しい畳をみて、やすらぎを覚えるのは単に感触だけではなく科学的理由に基づいているのです。

ジメジメ、カラカラの調節機能

密閉した押し入れの布団や衣類が湿り気を帯びていたり、壁にピッタリつけたタンスにカビが生えたりした経験をお持ちの方は多いと思います。

これが「結露現象」と言われるもので、室内の温度が異常に高くなったり室内と室外の温度差が大きくなった場合に発生します。

木材は全く「結露現象」が生じないわけではありませんが、保温性が良く、冷えにくいうえに吸湿性があるために結露が生じにくく万一、生じても水分を吸収し結露を防ぐ機能を持っております。

木材は、その重量の12~15%程度(乾燥状態)の水分を含んでおります。例えば、軸組工法木造住宅に使用される柱には10.5cm×10.5cm×3mの角材が使用されますが、これにはビールビン3本分の水分が含まれております。

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そうして、湿度が高くなると30%位まで空中の湿度を吸収し、乾燥するとこれらの水分を放出しています。

このように木材は周囲の湿度に応じて空中の水分を吸収・放出する湿度の調節機能を持っておりますが、無機質材料にはこのような作用が出来ないため結露を生ずることになるのです。

熱を伝えにくい機能

木材は保温性・断熱性に優れた材料

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木材の主な成分であるセルロースやリグニンは熱を伝えにくい物質であるうえに木材の構造を組み立てている細胞は中空で細胞と細胞の間にも隙間があり、空気が多く含まれているため、保温や断熱の効果が優れているのです。

熱伝わる物差しとして「熱伝導率」があります。水を1とした場合、木材は0.5、鉄は105となっており、鉄は木材に比べ200倍も早く熱を伝えることになります。コンクリートは木材の3~4倍です。

床の材料の違いによる足の冷え方を名古屋大学環境医学研究所が実験した結果は次の通りでした。

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このように木材を使用した床は足の皮膚温を殆ど奪いませんが、コンクリートは急激に足の皮膚温を奪いますので冷えていきまので足や膝の疲れを生ずるのです。

昔から風呂場のスノコや鍋の取り手に木材を使用しているのは、熱を伝えにくい木材の性質を利用した生活の知恵と言えます。

これらのことは木材が優れた保温性、断熱性を有し快適な住環境を作る優れた住宅資材であることを示すものです。

木材の弾力性

なぜヒノキ舞台か?

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床が硬いと歩くときの衝撃をすべて足で受けなければなりません。そのため、硬い床は歩きにくく、脚に疲れを覚えるのです。また、歩いているとき、体重の2~3割の力が脚の関節にかかると言われ、関節の負担も大きくなります。

学校の体育館等の床材も一時期は、石油化学製品を使った床材が多く使用されておりましたが、今日では再び木質系の床材が使用されるようになってきました。
これは、木材が衝撃を適度に吸収する材料のため、子供たちの膝や足首への負担を軽減するためによるものです。

床の硬さは歩き易さだけの問題ではなく安全性にも影響します。硬い床では転んで頭を打った場合など衝撃が大きく、小さなケガでは済みません。

もし歌舞伎の舞台が鉄やコンクリート張りであった場合は役者の膝や足はガタガタになっしまうのではないでしょうか。

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床にスギ圧密材(12mmを4mmに圧縮)を使った『綾てるはドーム』

光と音の吸収性

木材は光を和らげ音を吸収

目は人体の中で最も敏感な器官であり、目が疲れるとやがて体全体の疲れが出てきます。

人間の目は住まいの中でもまぶしさを嫌い、落ち着いた光を好みます。人間の目には反射率50~60%の光がもっとも心地が良いとされております。住宅などで天井や壁には木材や艶のない凸凹のある材料を使い直射日光が目に入らないようにしているのはこのためです。

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左のグラフで人間に最も適した反射率はヒノキや畳で、スギや障子紙がこれに次いでおります。

軸組工法木造住宅の和室にスギやヒノキの柱、スギの天井板、障子、畳を使っているため光が優しく住む人の気持ちを和やかにするのはこれらの材料の持つ性質によるものです。また、木材は目に悪い影響を与える紫外線を吸収する働きが最も強い素材となっております。

また、木材には適度の吸音性や残響効果があります。

世界的なバイオリストであるアイザック・スターンから最大の絶賛を受けた宮崎県立芸術劇場コンサートホールは内装にケヤキ(綾営林署産)をふんだんに使い、通称「ケヤキホール」とも言われ音響に最大の配慮をしています。

このように音の響きに気を遣う場所の材料として、木に勝るものはないと言っても過言ではありません。

下のグラフは、木材の吸音率を他の建材と比べたものです。人の話し声の中音域にあたる周波数(500ヘルツ)で調べたものですが、ガラスやコンクリートに比べると、木材や畳の吸音率が良いことがお分かりのことと思います。

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木材の耐火性

木材は鉄よりも火に強い

木材が鉄より火に強いと言ったら「そんなバカな」と思われるかもしれません。

確かに、木材は燃えますし鉄は燃えません。

しかし、木材も或る程度の厚さや太さがあれば表面が焦がれるだけで、それ以上はなかなか燃えません。

木材は420℃(着火危険温度250℃)で発火(燃焼速度は30分で18mm)し、その後は表面に出来た炭化層が断熱材の役割を果たし、木材内部の温度上昇を押さえて、熱分解して生ずる可燃ガスの発生を防ぎますのでそれ以上は燃にくくなるのです。

下のグラフをご覧下さい。

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鉄は温度が250℃になると変形しはじめ、5分も経たないうちに元の強さの半分になってしまいますが、木材が元の強さの半分になるのには20分もかかっております。

アルミは5分も経たないうちに元の強さの30%程度まで低下しております。

多くの火事跡で木の柱は黒焦げになっておりますが、その骨組みは残っております。

しかし、鉄骨造りの場合は柱はグニャグニヤと曲がり屋根が崩れ落ちていることが多く、窓枠に使われたアルミサッシは原形をとどめていないこどが多いことなどから、表題の意味がお分かりのことと思います。

木材の強さ

木材は軽くて強い

鉄と木材はどちらが強いと思われますか?

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同じ太さの鉄と木材を引きちぎろうとすれば、鉄の方が木材よりも強い力を必要とします。

しかし、同じ重さの鉄と木材で比べてみると木材の方が強いのです。また、重さあたりの圧縮強さを比較しますとスギ材ではコンクリートの5倍、引っ張り強さでは4倍の強さがあります。

わが国のように地震の多い国では軽くて強い木材で住宅を造ることは大きなメリットがあるのではないでしょうか。同じ震度の地震で建物が受ける地震力(振動エネルギー)は建物の重力に比例しますので、同じ強度の住宅であれば、木造住宅の方が地震に対しては被害が少ないと言うことになります。

過去の大きな地震被害の調査結果をみても、必ずしも木造住宅が倒壊し鉄筋コンクリート住宅や鉄骨造りの住宅が残ったと言うわけではありません。

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新潟地震では木造住宅はほとんど殆ど倒れておりません。関東大震災のときは鉄筋コンクリート建造物の5%が倒れたのに対し、木造建築物では1%しか倒れなかったそうです。

平成7年1月の阪神・淡路大震災では木造住宅が大量に倒壊し、木造住宅は地震に弱いと言う風説が飛び交いましたが、倒壊した木造住宅の多くは昭和55年の建築基準法改正前の住宅であり、改正後の建築基準法に基づき建てたものであれば、地震に対し軸組工法木造住宅が鉄筋コンクリート造り・鉄骨造や2×4工法住宅より弱いということはない、ということを理解して頂きたいと思います。

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